しあわせはあるいてこない。だから、あるいていくんだよ。

あめのひ
クラクションのおとがわからず
こうつうじこにあった友人がいる。

さいわいかるかった。
耳がきこえない。
はだはすきとおるようにしろく
くちびるはさくらんぼのよう。
手話ではなそうとすると
手話にたよってしまうから
はっきりはなしてくれたら
わかる、といった。

はなしをしているあいだ
彼女はわたしのくちもとを
じっとみつめている。
そして、かいわする。

いつも、にこにこ。
まけんきがつよい。
センスもすてき。
ファッションのしごとをし
いまは
さんにんのむすこのおかあさん。

だんなさんはてつだいはしていたが
こそだてを彼女にまかせた。
むすこのなきごえがきこえなくて
いろんなタイミングを
はずしてしまうことも
あったけれど
いつもちいさなむすこたちに
はなしかけていた。

ひとりはだっこ
ひとりはおんぶ
ひとりはてをつなぎ
みるたびにさんにん
いっしょにかかえ
ふれあう、だきあう。

やがて、むすこたちは
おかあさんが
耳がきこえないことをわかってきて
おかあさんをたすけるようになり
おにいちゃんは
おとうとのめんどうをよくみて
おとうとたちは
おにいちゃんをたよる
なかよしきょうだい。

むすこたちはおかあさんに
いろんなことをはなし
おかあさんはよくわらったりおこったりしている。


彼女がはなしてくれた
おいたちは
とてもかなしかった。
でも耳がきこえないことを
彼女は
個性のひとつにかえた。

チャーミングな彼女のもとへ
たくさんのともだちと
あいするかぞく。
しあわせがあつまってくる。

しあわせは
あるいてこない。

だから彼女は
あるいていった。

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