あかい裁縫箱とみぃちゃんと。

あかい裁縫箱とみぃちゃんと

頼まれていたシャツのボタンを縫いつけ、歯で糸を切ろうとして、ある友人を思い出した。

詩の芥川賞ともいえるH氏賞を受賞された方が誘ってくださり、現代詩の同人誌に加わっていた。
会合は苦手だった。思想を語り合うみなさんの、どの言葉も私にはむずかしくて、無言で聞くしかなかった。
そんなにふかく考えて、感じてあるんだ、と、ただただ、驚いているばかり。

その中にひとり、静かに聞き入りながら、黙ってほほえんでいる彼女がいた。瞳は真剣に瞬きもほとんどなく、両手の拳はかたく閉ざされ、詩を愛しているんだなと思って、私はうつくしい絵を眺めるように見ていた。

今朝、ボタンをつけながら、浮かんだのは、彼女が書いた詩。

『月の夜のおまじない』
昨日の夜 どこにいたの?
あなたのシャツのボタンをぬいつけながら
わたしはひとりでつぶやきます
昨日の夜は 月がきれいだったわね
そう きみの耳に飾りたい
銀色のイヤリングのような三日月が
いえ あなたの嘘のようなまあるい月よ
無言のまま 白い歯で糸を切って
あなたのシャツの胸のあたりに
わたしはひっそりと
金色の針をすべりこませるのです
(「女の詩」最優秀賞)

福岡各所で公募された詩の受賞作には、たいていいつも、知る限り、彼女がいた。
会合では、無口な彼女が一度書いていた評論文を読んで、受けた衝撃。静かなのに、あんなに静かな空気の人なのに。内に秘めた、閃光のようにつらぬいていく情熱、まぶしくて幾度も目をこすった。

知らないということは無邪気だったかな。あの同人誌にいた方々、福岡から九州へ、そして日本へ。代表的な詩人ばかりが名前を連ねている。

あんまりむずかしくは
かんがえない
でも、なんかいいな、ですまなくて
なぜ?って感じるのは、なぜ?

感動って
五感にふれ
あ、とおもった
あ、の一瞬
言葉にでたときは
もうとおりすぎている
そんなふうにおもう
いっちばんはじめの
あ、ということを感じること
それを感じられるってことが
じつはかんじんで
たいせつなことかもしれない

うちのにゃんこどもたち
みんにゃをみるたびに
あ、とか、は、とか
おかぁちゃんはしげきてき
この写真のあと
あーーーー!と
ちがういみでおかぁちゃんは
ひめいをあげるけど
それはブログの方に記憶として
のこそうね

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