詩人・久坂葉子

FB_IMG_1474411401270.jpg


風の音が、誰かの声に聞こえる。
そんな夜の、ひとりごと。


『こんな世界に私は住みたい』

こんな世界に私は住みたい
肩書きもいらず勲章もなく
人はそれぞれはだかのままの心でもって
礼節だけはわきまえて
男と女も仕事をし 男と女も恋をして
ひとりひとりの幸福を
ひとりひとりのねぎごとを
心にそっと小さくもって一生かかって、
みずからのためしつくす
こんな世界に私はすみたい


(久坂葉子さん作詩、1945年6月作)


18歳で芥川賞候補となった、久坂葉子さん。彼女の作品は、誰の仕事にも似ていない。かけがえのない作家だったと思う。なにごとにも彼女は2、3年ずつ早すぎたようなところがあり、時代をおもう。


ながい目でみれば、人間の歴史は人間の歴史としてのまとまりをもち、一つの航跡をつくっている。その中でどの人もがちがった航跡をつくりつつ、人間の歴史全体の航跡に参加しているのだろう。


久坂葉子さんの航跡は、ひとりの誠実な個人の生涯のもつだけの意味をもっている。この人は自分にせいいっぱいのことをしたに違いない。


歴史や時代に変質を要求され、こたえきれず、自分をたちきってしまったひとりの生涯だが、このような人はほかにも少なからずいるはずだ。


むなしい名誉心と甘えと
廃するものをみせながら
底をつらぬく勇気をかんじる
いまはじゆうだじゆうなんだね
久坂葉子さんの詩がいきをふきかえす
いまだからひびく


うちのにゃんこどもたち
きょうもいそがしいけどね
きょうもいっしょにあるくよ。

いきるよだいじにだいじに


久坂葉子1952年(昭和31年)12月31日21歳阪急六甲駅において自らいのちをたった。  

関連記事一覧

PAGE TOP